猫の腎不全

猫の腎不全について

アメリカンカール
猫の腎不全は、現在では慢性腎疾患(CKD)と呼ばれ、一般的には腎機能の50%以上が失われた状態を言います。

 

このCKDは老齢猫に多くみられあるデータでは、10歳以上の猫の30%以上がCKDを患っていると言われており、明らかに人間や犬よりも割合が多いと考えられます。

 

 

猫の腎不全(CKD)の原因

猫のCKDの原因ですが、実は未だにはっきりしたことはわかっていません。

 

もともと砂漠で暮らす猫が先祖と言われており、少ないお水で生きていくことができるため、その分、他の動物よりも腎臓の機能は高性能で、その分、寿命が短いのかもしれません。

 

あるいは何かしらのウイルスが関係している可能性や、動物性タンパク代謝の影響(タンパク質自体が腎臓の負担になることがあります)なども考えられています。

 

また、CKDには免疫系が関わっていることもわかってきており、動物の免疫細胞の約60%が腸管に存在するといわれています。

 

ですので、実は腸管に直接影響を及ぼす「食事」つまりキャットフードなんかもCKDの発症に関わっているのでは、と考えられてきています。

 

猫の腎不全(CKDの症状

腎臓は、体の老廃物が尿を通して体外へ排出させる排泄器官としての役割の他にも、ミネラルバランスの調整、血圧調整、赤血球産生のサポートなど、様々な役割を担っています。そのため、CKDでは様々な症状が見られるようになります。

 

本来、尿に排泄される老廃物が体に残ってしまうと、老廃物自体が体にダメージを与えてしまいます。特に粘膜障害が大きく、口内炎や胃炎などを引き起こします。

 

その結果、元気消失、食欲不振、口の痛み、嘔吐などが見られるようになります。

 

また、口の痛みから毛づくろいができなくなるため、毛ヅヤが悪くなり、毛玉ができるようにもなります。

 

さらに老廃物が体に溜まりすぎると、「尿毒症」と呼ばれる大変危険な状態に陥ることがあります。尿毒症では特有の口臭があり、また猫が動けなくなるほどグッタリしてしまうこともありますので、注意が必要です。

 

CKDになると腎臓の機能の一つである「水の再吸収」ができなくなります。

 

そのため腎臓に入った水分がそのまま再吸収されることなく尿になります。すると、尿の量がとても増え、その分本能的に水分摂取量も多くなります。

 

このお水をたくさん飲んで、たくさん尿が出てしまう症状のことを「多飲多尿」と言いますが、CKDだけでなく、糖尿病やホルモンの病気など、様々な病気で見られる症状ですので、猫が明らかにお水を飲む量が増え、薄い尿をたくさんするようになった場合には、必ず動物病院で尿検査を含む診察を受けるようにしてください。

 

中には、人間のCKDでは、尿が減り、水分が体から排泄されないため、むくみなどが見られるようになることから、猫のCKDでも尿が減るんじゃないかと考える方がいらっしゃいますが、人間のCKDとはメカニズムが異なるため、注意が必要です。

 

猫の腎不全(CKDの診断および治療

CKDの診断は、臨床症状や尿検査、血液検査で診断します。

 

中でも尿検査は、CKDを早く見つけるために重要な検査で、CKDの診断には欠かせません。

 

一方、血液検査でもCKDの診断はできますが、血液検査で異常が見られた時には、すでに腎臓の機能の4分の3が喪失している状態のため、より早い段階でCKDを見つけるためにはやはり尿検査をしっかりと受けたいところです。

 

一度CKDと診断されると完治は困難なため、CKDの病態を悪化させないような治療を行います。

 

治療は、CKDの重症度によっても変わりますが、食事療法や輸液療法が中心になります。

 

食事療法では、腎臓に負担のかかり、病態を悪化させる原因となるタンパク質や塩分、リンを制限したり、あるいはカリウムやオメガ脂肪酸などを強化したものになります。

 

食事療法は、きちんと管理できれば、猫の寿命を確実に伸ばすことがわかっています。

 

しかし、腎臓の療法食はなかなか食べてくれない猫も多く、普段の食事からの切り替えが難しい面があります。

 

しかし、多くの猫は時間をかけて、きちんと切り替えれば食べてくれるようになりますので、かかりつけの獣医師と相談しながら進めることが大切です。

 

また食事の他にも、腎臓に障害を与える窒素化合物を吸着する活性炭や、食事中のリンを吸着するサプリメントなども活用することで、より腎臓に負担の少ない治療が可能です。

 

CKDが進行すると、食事療法では管理が難しくなるため、多くの場合は輸液療法を併用するようになります。

 

輸液療法は定期的に動物病院へ通院したり、あるいは獣医師の指導のもと、自宅で実施したりします。

 

人間のCKDでは、この時点では透析を行うのですが、獣医療ではまだまだ透析を実施できる動物病院は限られているため、この輸液療法が中心となっています。

 

さらにはCKDが進むと、腎臓で作られる造血成分も減ってしまい、その結果として貧血症状が見られるようになります。

 

そのためエリスロポエチンという赤血球を作るために必要な成分を補う治療を行うこともあります。

 

猫の腎不全(CKD)の管理

またCKDの管理で大切なのが「お水」です。

 

前述のとおり猫のCKDでは人間と違って「多飲多尿」という症状がみられ、普段よりもお水を飲む量が多くなります。

 

そのため、体に多く入ってくるお水にもこだわってあげることで、より良い健康管理が可能になります。特に腎臓はタンパクやミネラルを調整する作用があり、その機能も低下しています。

 

さらに腎臓の療法食ではリンなどのミネラルバランスを調整しているため、それらを邪魔しないようなお水を選んであげることが重要です。

 

私がお勧めするのは、ナチュラルな軟水のミネラルウォーターです。

 

硬水では様々なミネラルが加わるため、CKDの猫だけでなく、健康な猫に使用することもお勧めできません。

 

また、水道水に含まれる塩素なども猫にとってどのように作用するのか、はっきりわからないところもあります。

 

ですので、本来、動物が昔から摂取してきた天然のお水、そして猫に負担の少ない軟水を選んであげることをお勧めします。

 

また、ミネラルウォーターでも、コストパフォーマンスに優れたウォーターサーバーのお水は、猫にとっても人間にとっても使い勝手が良いため、一度検討されることをお勧めします。

 

猫の腎不全(CKD)は高齢の猫で多く見られる病気です。

 

一度発症すると完治は難しく、また血液検査ではCKDが進行した状態でしか診断できないため、なるべく尿検査を積極的に受けるようにしてください。

 

また、CKDの予防にもまた治療にも「お水」は非常に大切です。日常生活での飲み水はなるべく猫に負担の少ないものをしっかりと選んであげるようにしてください。

 

-記事作成者:フォロン動物病院 獣医師-

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