猫のストレス

バーマン
ストレスとは、社会的には、精神的な緊張からくる生体反応のことを意味しますが、本来は、精神的な緊張だけでなく、身体的な傷害(外傷や中毒、伝染病など)や暑さ、寒さなどに対する生体反応も含まれます。

 

猫にはストレスがあるのか、と考えた時、後者の意味でのストレスは間違いなくありますが、前者の意味については、一昔前まで「動物にストレスはない」と言われいたこともあり、はっきりしたことがわかっていませんでした。

 

しかし、現在では猫にも明らかにストレスが存在することがわかっています。

 

猫白血病ウイルスとストレス

例えば、猫のウイルス病の中に、「猫白血病ウイルス感染症」という病気があります。

 

この病気はその名のとおり、白血病という血液のがんを引き起こす恐ろしい病気なのですが、実は、多くの猫は、1歳以上になって大人になると、このウイルスに対する抵抗力を持つようになり、滅多に感染しなくなります。

 

通常のウイルス病、例えば、猫エイズと言われるFIV感染症は、猫エイズウイルスを持つ猫とケンカしたりして、傷口からウイルスが体内に侵入すると感染してしまいますが、これは1歳以上になってもかかりにくくなるということはありません。

 

一方、猫白血病ウイルスは、1歳以上の猫は、一般的な生活環境であれば、猫白血病ウイルスを持っている猫と接触しても感染することはほとんどありません(もちろん濃厚に接触していたり、免疫力が弱い仔猫は感染しますので注意が必要です)。

 

しかし、多頭飼育の中では、割とウイルスが蔓延してしまうケースが多く見られます。

 

つまり、大人の猫でも猫白血病ウイルスに感染してしまうことがあるのです。その理由の一つが「ストレス」と言われています。

 

猫は本来、単独行動を好む動物ですが、多頭飼育の場合、なかなか自分一人のテリトリーを確保することができません。

 

それが猫にとっては大きなストレスであり、抗ストレスホルモンである「コルチゾール」がたくさん分泌されるようになります。

 

コルチゾールはストレスに対して戦うためのホルモンですので、本来、ストレスがかかった動物にとっては大切なホルモンなのです。

 

しかし、テリトリーが確保できない多頭飼育の猫の場合、ほぼ24時間、ストレスにさらされることになり、コルチゾールが分泌されっぱなしになるのですが(もちろん厳密には多少の分泌量の増減はあります)、あまりにコルチゾールが分泌されてしまうと、そのコルチゾールの作用で、逆に免疫力が落ちてしまうことがあります。

 

すると、免疫力が落ちた猫は、猫白血病ウイルスにもかかりやすくなってしまい、その結果、多頭飼育では猫白血病ウイルス感染症が蔓延してしまうことになります。

 

もちろん、それ以外にも栄養面とか衛生面での感染要因はありますが、猫白血病ウイルス感染症は猫のストレスが大きな感染要因になっているのです。

 

特発性下部尿路疾患と猫のストレス

また、猫のストレスが重要な要因となる病気に、特発性下部尿路疾患(iFLUTD)と呼ばれる病気があります。

 

iFLUTDは、泌尿器系のトラブルの中で割とよく見られる病気なのですが、特発性という名のとおり原因が不明で、主に血尿や頻尿、排尿痛を引き起こす病気です。原因不明な病気なのですが、今では猫のストレスが大きな要因になっていると考えられています。

 

猫は何かしらの精神的なストレスを感じると、テリトリーのどこかに隠れてじっとしてしまいます。

 

そしてそのストレスの原因が解消されるまで、ほとんどのその場を動きません。

 

例えば家に来客があると、他人が苦手な猫はその来客が終わるまで、ずっと隠れているというようなことも珍しくはありません。

 

そのようなストレスを多く感じていると、自然とお水を飲む量も減ってしまい、それだけ量の少ない、濃い尿をするようになります。

 

本来、猫はあまり水分を取らなくても問題にならない動物なのですが、現在の猫はドライフードが主流なため、食事以外での水分摂取は非常に重要なのです。

 

しかし、ストレスの多い猫はあまりお水を飲むことをしません。そのため、泌尿器系のトラブルを引き起こしやすい状態になってしまいます。

 

そのため、iFLUTDの猫では、生活環境を改善して、猫のストレスを減らすことが最も大切なことなのですが、中でも猫の飲水量を確保することが重要だと考えられています。

 

とはいえ、猫はただでさえお水をあまり飲まない動物なので、なかなか飲水量を増やすのは困難です。

 

ウェットフードやドライフードにお水を混ぜるなど、食事と一緒に水分を摂取することも大切ですが、食事以外でもこまめにお水が飲めるように、テリトリーの複数箇所にお水を置いたり、またお水をこまめに交換したり、あるいは時間差で各場所のお水を交換するのも良い方法です。

 

さらに水道水ではなく軟水のミネラルウォーターの方が飲水量がアップする猫も多いようなので、そう言ったお水を使うのも良い方法です。特に猫では、少量ずつこまめにお水を取り替えることが大切ですので、その利便性から、ウォーターサーバーを用いると大変便利です。

 

また、トイレを我慢させないように、こまめに掃除して、トイレを清潔に保つことも重要です。

 

このように、実は猫にとっては、ストレスが大きな病気を引き起こす原因になったりもしますので、なるべく猫の目線で生活環境を整えてあげることも大切ですね。
特にiFLUTDは猫の泌尿器疾患の中でも発生が多い病気です。その管理にはお水が非常に重要ですので、予防のためにも普段からのお水選び、お水の管理にはこだわりたいものですね。

 

-記事作成者:フォロン動物病院 獣医師-

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